ワンポイント税務
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2026年3月 大家さんのための税金基礎講座
暦年贈与 と 相続時精算課税 いま選ぶならどっち?
2024年の贈与税改正から2年。生前贈与の考え方は、 大きく変わりました。
かつては「生前贈与といえば暦年贈与」が定番でしたが、現在はそう単純ではありません。
暦 年課税は持ち戻し期間が延び、相続時精算課税は逆に使いやすくなったからです。
今回は、2026年5月時点の制度を前提に、
不動産オーナーが押さえておきたい贈与の考え方をQ&A形式で整理します。
Q1 2024年改正で、何が変わったのですか?
A 押さえるべき変化は2つです。ひとつは、暦年贈与の持ち戻し期間が3年から7年へ 延長されたこと。Q2 暦年贈与は不利になったのですか?
もうひとつは、相続時精算課税に年 110万円の基礎控除が 新設されたことですこれにより、「節税するならとりあえず暦年贈与」という時代ではなくなりました。
A 不利になったというより、早く始めるほど効果 が出やすい制度に変わりました。
相続や遺贈で財産を取得した人が、被相続人から加算 対象期間内に受けた贈与は、110万円以下でも相続税の課税価格に加算されます。
ただし2026年時点では経過 措置の途中です。
2026年末までに相続開始なら3年以 内、2027年から2030年までは2024年1月1日から死亡日まで、2031年以後にフルで7年以内が対象です 。
なお、延長された4年間の贈与は総額100万円まで加算し ない扱いです。
Q3 相続時精算課税は、 なぜ注目されているのですか?
A 以前は「結局、相続時に足し戻される制度」と 見られがちでしたが、今は違います。
この制度は、原則として60歳以上の父母・祖父母から 18歳以上の子・孫への贈与で選べます。
改正後は、年 110万円の基礎控除が使え、その部分は相続時にも加 算されません 。
さらに、基礎控除とは別に累計2,500万 円までの特別控除があり、それを超えた部分の税率は一 律20%です。
少額を毎年確実に移したい人には、かなり使いやすくなりました。
Q4 結局、どちらを選ぶべきですか?
A 目安はシンプルです。
・毎年110万円前後を確実に移したいなら、相続時精 算課税が有力。
・年間110万円を超える額を、長期間かけて移したいな ら、暦年贈与も有力。
相続時精算課税は、贈与者の死亡時期に左右されにくい点が強みです。
一方、暦年贈与は贈与税を払ってでも財 産を前倒しで移せるため、
資産規模が大きい人ほど有利になる場面があります。
Q5 制度選びで注意すべき点はありますか?
Aあります。
最大の注意点は、相続時精算課税は 一度選ぶと、その贈与者について暦年課税へ 戻せないことです。
選択するには、最初の贈与を受けた翌年2月1日から3 月15日までに届出が必要です。
なお、制度は贈与者ごとに選べるため、父は相続時精算課税、母は暦年贈与、という使い分けは可能です。
Q6 不動産オーナーは、 どう考えるのが実務的ですか?
A 税額だけで決めないことです。
賃貸オーナーの場合は、修繕資金、物件の組み換え、法 人化、家族への承継方針まで関わります。
大切なのは、「誰に・いくら・いつまでに移すか」を先に決め、そのうえで制度を選ぶこと。
2026年現在は、少額を長く確実に移すなら相続時精算 課税、まとまった額を長期間かけて移すなら暦年贈与。
この整理を出発点に考えるのが現実的です。
ご自身の資産規模と健康状態、そ して「誰に・いくら・いつまで渡すか」を明確にし、税理士などの専門家と相談し ながら、最適な贈与プランを早めに構築することが資産 防衛の鍵となります。
あわせて、賃貸経営の承継や家族間 のトラブル防止まで見据えておくことも
次世代へ資産を 円滑に引き継ぐために大切です。


