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2026年11月 弁護士による賃貸法律相談室 小川

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  • 2026年11月 弁護士による賃貸法律相談室

        

    契約後に修繕費の値上げを求められたら?
    改正建設業法と、オーナーが押さえる工事契約



    【アパートオーナーからのご相談】

    所有するアパートの外壁改修を700万円で発注し、契約書も取り交わしました。
    ところが着工後、施工会社から「資材が値上がりしたので120万円上乗せしてほしい」と言われています。
    応じなければならないのでしょうか?




    工事代金は、契約で合意した工事内容と金額によって決まります。
    当初契約の範囲内の工事について、施工会社の見込みを超える手間や原価がかかったというだけでは、
    追加代金の支払義務は生じません。
    契約後の物価変動を理由に、一方的に代金を引き上げることも原則としてできません。

     これと区別すべきなのが追加・変更工事です。
    下地補修の範囲拡大や仕上材のグレード変更などが、当初の契約範囲を超える場合は追加・変更工事となり、
    その内容と追加代金について合意する必要があります。
    施工会社が勝手に工事内容を追加・変更した場合は、追加の支払義務は生じません。


    もっとも、資材高騰や人手不足の負担が受注者側に偏っていたことを踏まえ、
    令和6年改正建設業法(価格変更協議の規定は令和6年12月13日施行、
    全体は令和7年12月12日に全面施行)は、この場面のルールを新設しました。


     建設業者は、主要な資機材の供給不足・遅延や価格高騰等であって
    当事者双方の責めに帰し得ないものが生じるおそれがあると認めるときは、契約締結までに、
    その旨を状況把握に必要な情報と併せて書面等で注文者へ通知しなければなりません(20条の2第2項)。
    通知をした建設業者は、契約後に当該事象が現実化した場合、工期・工事内容・請負代金額の変更協議を
    申し出ることができます(同条3項)。
    この申出権は、施工会社が許可を受けた「建設業者」であり(2条3項)、
    かつ契約前に所定の通知をしていた場合に認められます。

     もっとも、事前通知がなかったことだけを理由に協議を拒んでよいわけではなく、
    ガイドラインは、その場合も契約書の価格変更条項に従って協議するよう求めています。
    なお、工期の短い修繕工事では契約時点で高騰を具体的に予測しにくく、
    事前通知の対象となる場面は多くないとされています。



    建設業法20条の2第3項に基づく協議を申し出られた場合、
    オーナーは、申出が根拠を欠く場合などを除き、誠実に協議に応ずるよう努めなければなりません(同条4項)。
    ただし、協議に応じることは、請求額をそのまま支払うことではありません。

     確認すべきは、値上がりが契約後に生じたものか、対象資材と数量、当初単価と現在の単価、その差額です。
    メーカーの価格改定資料、公的な価格指数、仕入先の見積書の提出を求めましょう。
    増額の合意も価格変更条項による変更も成立しなければ、支払額は当初の契約額のままです。

     増額を断っただけで直ちに法令違反になるわけではありませんが、
    取引上の地位を不当に利用して通常必要な原価を下回る金額を押し付けることは禁じられています
    (19条の3第1項)。


    見積りを依頼する際は、「外壁改修一式」といった曖昧な表現を避け、
    施工範囲、使用資材、数量、下地補修を含むかを示し、内訳の記載された見積書を求めましょう。



     工事請負契約書には、価格等の変動に基づく工事内容又は請負代金額の変更と、
    その額の算定方法に関する定めを記載しなければなりません(19条1項8号)。
    法律上の必要記載事項です。
    加えて、紛争予防の観点からは、協議を求められる場面、確認資料、負担方法、申入れ期限まで
    具体化しておくとよいでしょう。

     協議は口頭で済ませず、提出された資料や双方の回答をメールや議事録として残しておくことが重要です。
     増額の合意内容は、署名又は記名押印した書面で取り交わす必要があります(19条2項)。
    追加・変更工事では、原則として着手前に取り交わします。
    後日の紛争を防ぐため、増額の対象となる資材、数量、算定根拠、支払時期や工期への影響も記載しておきましょう。
    冒頭のご相談では、契約前の通知の有無を確かめ、120万円の内訳について
    前記の資料の提出を求めたうえで、価格変更条項に照らして負担の要否と範囲を判断し、
    応じる場合も断る場合も理由を付して書面で回答します。

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