2026年9月 弁護士による賃貸法律相談室 小川 | さいたま市の賃貸は株式会社 別所不動産にお任せ下さい!

賃貸法律相談室

  • 2026年9月 弁護士による賃貸法律相談室

        

    期限が迫る「相続登記の義務化」
    賃貸オーナーが2027年3月末までに確認すべきこと




    2024年4月から相続登記が義務化 され、過去に相続した分についても、 2027年3月31日という申請期限が迫っています。
    亡くなった方の名義の まま放置された賃貸物件は、いざという場面で思わぬ支障を生みます。
    前回は生前対策としての家族信託を取り上げましたが、今回は相続発生後に必要となる登記手続と期限への対応を弁護士が解説します。


    相続登記の義務化と申請期限

    不動産を相続した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません(不動産登記法76条の2)。
    重要なのは、この義務が過去の相続にも遡って適用される点です。
    2024年4月1 日より前に発生した相続で名義変更が未了の物件は、原則として2027年3月31日までに登記を済ませる必要があります。
    正当な理由なくこれを怠ると、10万円以下の過料の対象となり得ます。
    義務を負うのは、遺産分割・遺言・法定相続を問わず、不動産を取得した相続人です。
    なお、起算点は相続の 発生時ではなく「取得を知った日」であり、2024年4月以降にご自身が物件を相続したと知った場合は、その日から3年以内が期限となります。



    遺産分割がまとまらない時(相続人申告登記)

    「相続人間で分け方が決まらない」場合でも、期限は待ってくれません。
    その受け皿となるのが相続人申告登記です(同法76条の3)。
    これは、自分が相続人の一人である旨を法務局 に申し出るだけの簡易な手続で、これにより申請義務を果たしたものとみなされます。他の相続人と足並みをそろえる必要はなく、単独で申し出られる点も使いやすいところです。
    もっとも、その効果は申出の対象となった相続人にのみ及ぶため、他の相続人も各自で申し出るか、代理申出の対象に含める必要があります。
    期限内の対応としては法定相続分による相続登記も考えられますが、これは各相続人の持分を登記 するにとどまり、後日の遺産分割で改めて遺産分割の内容に応じた登記手続とその登記費用が生じます。
    手軽さの点では相続人申告登記が有力な選択肢となります。
    ただし、あくまで申請義務を履行す るための暫定的な手続です。
    所有権の移転を登記するものではないため、この申告だけでは物件を売却したり、融資の担保として抵当権を設定したりすることはできません。
    遺産分割が 成立した後は、その日から3年以内に、改めて正式な相続登記を申請する必要 があります。



    登記を放置することの実務上のリスク

    相続登記をしないまま放置すると、賃貸経営の随所で支障が生じます。
    物件を売却したり担保に提供したりする際は、 登記名義を現在の相続人に合わせる必要があり、名義が亡くなった方のままでは取引そのものが進みません。
    金融機関からの融資や大規模修繕の意思決定も、権利関係が未確定のままでは滞りがちです。
    相続人が複数いる物件では、賃貸借 契約の更新・解約や修繕をめぐる判断を誰が行うのかが定まらず、相続人間の対立を招くこともあります。
    また、遺産分割成立までの間の家賃収入は、原則として法律上は各共同相 続人が法定相続分に応じて取得するとされているため、家賃の受取口座だけでなく、管理費・修繕費の負担や確定申告に ついても税理士を交えて整理しておく必要があります。
    放置期間が長引くほど更に相続が発生して相続人の数が増え、 遺産分割の合意形成はいっそう困難になります。

    登記漏れを防ぐ(所有不動産記録証明制度)

    複数の土地やアパートをお持ちの場合、一部の物件だけ登 記を見落とすおそれがあります。
    ここで役立つのが、2026年 2月に始まった所有不動産記録証明制度です(同法119条の 2)。
    これは、特定の人が全国で登記名義人となっている不動産を一覧化した証明書を、法務局から取得できる制度です。 相続人は、被相続人名義の分を請求でき、遠方の物件も一覧 で把握できるため、登記漏れの防止に有効です。
    もっとも、登記上の住所・氏名が現況と一致しない物件や未登記建物は抽出されず、同姓同名の別人の不動産が含まれる可能性にも 注意が必要です。
    2027年3月末の期限まで残りわずかです。
    親族名義のまま気になる物件があり、手続に不安がある場合は、早めに弁護士や司法書士へご相談されることをお勧めします。

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