賃貸法律相談室
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2026年3月 弁護士による法律相談室
インフレ時代の「家賃増額請求」 ~借地借家法32条を正しく理解し適正賃料へ~
昨今の世界的な物価高騰や修繕費の急増、地価上昇に伴う固定資産税の負担増などを受け、これまで据え置かれることの多かった「家賃」のあり方が転換点を迎えています。
「一度決めた家賃は変えられない」と思い込んでいませんか?今回は、経済情勢の変化に対応するためにオーナーが知っておくべき「賃料増額請求」の法律知識と、実務上の交渉ポイントを解説します。
◆ 賃料増額が認められる「3つの要件」
賃貸借契約時に決められた賃料は、、その後どちらからも一方的に変更はできないのが原則です。しかし、契約期間が長期に及ぶことも珍しくない不動産賃貸借において、当初の金額を永久に固定し続けることは不公平を生みます。そこで「借地借家法第32条第1項」では、主に以下のような事情で家賃が不相当になった場合に、将来に向かって増額を請求できる権利(賃料増減額請求権)を認めています。
①公租公課の増減 固定資産税・都市計画税の大幅な上昇など
②経済事情の変動 物価、人権費、建築コスト、金利などの変動
③近隣相場との乖離 周辺の同種物件と比較して不相当に安い
ただし、契約書に「一定期間は賃料を増額しない」旨の特約がある場合は、その特約が優先されるため注意が必要です。
◆ 増額請求の具体的な手順
では、実際に増額を求めるにはどうすればよいのでしょうか。法律上の手続きは以下の流れで進みます。
Step① まずは増額請求の意思表示
まずは借主に対し、増額したい金額を示して請求します。証拠を残すため、口頭ではなく書面で行うのが望ましいでしょう(契約更新のタイミングなどが一般的です)。協議がまとまれば、新たに増額された賃料で賃貸借契約(もしくは賃料増額の合意書)を取り交わします。
Step② 協議がまとまらなかった場合
当事者間の話し合いで決着がつかない場合、すぐに裁判を起こすことはできません。
①まずは調停の申立て
簡易裁判所に「調停」を申し立てます(調停前置主義)。裁判所が選任した調停委員(不動産鑑定士など)が間に入り、専門的見地から合意を促します。
②調停不成立の場合は訴訟へ
調停で合意に至らない場合、最終的には「訴訟(裁判)」へ進みます。調停で整理した争点を踏まえ、裁判所が適正賃料を判断します。
Step③ 最終手段は「訴訟」
訴訟では、不動産鑑定士による鑑定評価が行われることが多く、鑑定費用(数十万円程度)が発生し得ます。また、結論まで半年~1年程度を要することもあり、貸主・借主双方にとって負担の大きい手続です。実務上は、まず調停段階での合意を目指すことが現実的です。
◆ 円滑な交渉のために
法的手段は時間も費用もかかるため、実務上はあくまで交渉による合意を目指すのが得策です。
借主の理解を得るために、以下の3点を意識いsましょう。
①丁寧な事情説明から始める
いきなり通知書を送るのではなく、面談や手紙で「なぜ増額が必要か」を誠実に伝えましょう。
②客観的データの準備
固定資産税の納税通知書や、近隣の募集賃料データなど、根拠となる数字を示すことで、交渉の説得力が増します。
③段階的な総額も検討
一度に大幅な値上げを求めず、数年かけて段階的に適正賃料へ近づける提案も、合意への近道です。
弁護士 北村亮典 *この記事は、2026年1月31日時点の法令等に基づいて書かれています。


