2026年1月 弁護士による賃貸法律相談室 吉村 | さいたま市の賃貸は株式会社 別所不動産にお任せ下さい!

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    住宅セーフティネット法の改正について

     住宅セーフティネット法(正式名称:住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律)の改正法が2024年6月に公布され、2025年10月1日より施行されました。
     今回の法改正は、賃貸住宅オーナー様の実務に大きな影響を与える重要な内容となっています。

     今回の記事では、改正の概要と弁護士の視点から特に重要と思われる点について解説します。


     住宅セーフティネット法とは 
    住宅セーフティネット法とは、高齢、障害、低所得、子育て中など、賃貸住宅への入居にハードルを抱えている人(「住宅確保要配慮者」といいます。)が、民間の賃貸住宅に入りやすくするための法律で、2017年に施行されました。
     この法律は、住宅確保要配慮者と賃貸住宅オーナーの双方を支援するため、以下の3つの制度を柱としています。

     住宅の登録制度 
    オーナーが所有する空き家や賃貸住宅を、「要配慮者の入居を拒まない住宅」(セーフティネット住宅)として都道府県や市町村に登録する制度 
     経済的な支援 
    オーナーと入居者の双方への経済的な支援(登録住宅の改修費用の一部等の補助など) 
      居住支援  
    NPO法人や社会福祉法人が「居住支援法人」として指定を受け、入居前後(物件探し、入居手続、見守りなど)のサポートを行うこと  

     2024年改正の概要 
    今回の改正は、高齢者や低所得者などの住宅確保要配慮者が増加する中で、賃貸住宅オーナーが抱える不安(家賃滞納、孤独死、残置物処理など)を軽減し、同時に入居者の居住の安定を強化することを目的としています。
     主な改正のポイントは、以下の3つの柱にまとめられます。

     Point1オーナーの不安を軽減する仕組みの強化 
    ①家賃債務保証業者の認定制度の創設
     国交大臣が優良な保証業者を認定する制度が新設され、滞納リスクへの備えが強化されました。
    ②生活保護受給者の家賃の「代理納付」の原則化
     「居住サポート住宅」への入居時、自治体が家賃をオーナーへ直接支払う「代理納付」が原則化されました。

     Point2入居者死亡時の手続きの円滑化 
    ①残置物処理の円滑化
     居住支援法人が、生前の契約委任に基づき残置物の整理・撤去を行えるようになりました。
    ②「終身建物賃貸借」認可手続きの簡素化
     入居者死亡により契約終了する同制度の認可が、「住宅ごと」から「事業者ごと」へと簡素化され、導入しやすくなりました。

     Point3要配慮者への居住支援体制の強化 
     安否確認や見守り等のサポート付き住宅として、「居住サポート住宅」の認定制度が新たに創設されました。

      弁護士の視点から  
     今回の改正内容の中で、賃貸住宅のオーナー様にとって大きな影響があると見ているのは、「終身建物賃貸借」の手続きが簡素化されたという点です。

     もし、単身で居住していた高齢の賃借人が死亡した場合、賃貸借契約はその相続人に引き継がれます。
    このため、オーナーは、まず賃貸借の相続人に連絡を取り、契約の解約や退去手続(残置物処理)について協議しなければなりません。実務で特に問題となるのは、お子さんがいない賃借人の場合です。
     この場合、賃借人の兄弟姉妹(場合によっては甥か姪)が相続人となります。
    オーナーは、まず戸籍を辿って相続人を探し当てて連絡を取る必要があります。この調査だけでも専門家の費用を要します。

     さらに、仮に探し当てたとしても、兄弟姉妹も高齢で対応できない、あるいは疎遠だったので「相続放棄」したい、と主張され、協議が停滞するケースも少なくありません。
     相続人が対応しない場合には、オーナーは法的には、相続人全員を、または、相続人全員が相続放棄した場合には裁判所が選任する特別代理人を相手にして明渡請求訴訟を起こさなければ、適法に残置物を処分し、部屋を明け渡してもらうことができません。
     これは非常に大きな時間的・金銭的負担となります。

    「終身建物賃貸借」は、賃借人の死亡によって賃貸借契約が終了する制度です。
     相続の問題が発生しないため、法的に最も有効な方策の一つです。
    ________________________________________
     今後は、高齢の入居者を受け入れる際、終身建物賃貸借の利用を検討するとともに、居住支援法人や認定保証業者と連携し、入居時に残置物処理の事前委託契約等を締結してもらうよう働きかけることが、リスク管理として一層重要になるでしょう。

    弁護士 北村亮典 *この記事は、2025年11月30日時点の法令等に基づいて書かれています。

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