業界ニュース
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2026年4月 賃貸業界のニュースから
「住みたい街ランキング2026」から読み解く 賃貸需要の地殻変動と次の一手
大手ポータルサイトのLIFULL HOME'Sが「みんなが探した!住みたい街ランキング2026」を発表しました。
このランキングは単なる人気投票ではなく、実際にサイト掲載物件への問い合わせ数をもとにしているため、
生活者の行動が反映されやすい傾向があります。
今回の結果は、家賃や住宅価格の高騰が続くなかで、需要の重心がどこへ動いているのかをはっきりと示しています。
家賃上昇を避けて「ずらし」需要が狙い目
象徴的なのが、首都圏の「買って住みたい街」です。
いずれも都心から一定の距離がある郊外・準郊外エリアです。湯河原は東京から約100km、所要約90分の温泉地として知られています。
ここ数年は都心近郊の駅が上位を占めていましたが、価格高騰によって実需は一気に外側へ広がったことを示唆しています。
【首都圏】買って住みたい街
1位 湯河原(神奈川県)
2位 八王子(東京都)
3位 八街(千葉県)
ただし、購入市場の動きがそのまま賃貸市場に当てはまるわけではありません。賃貸はより現実的で、より計算された選択がなされます。その中心にあるのが、いわゆる「ずらし駅」の人気です。
首都圏の「借りて住みたい街」では、いずれも都市へダイレクトアクセスが可能でありながら、山手線内側と比べると賃料が抑えられるエリアです。
【首都圏】借りて住みたい街
1位 葛西(東京都)
2位 八王子(東京都)
3位 大宮(さいたま市)
ずらし駅とは、都心へ直通できる利便性を持ちながら、賃料が一段と下がる駅のことです。昨年に続き、今回もこうした駅が上位に並びました。
借り手は利便性を捨てて節約するのではなく、なるべく利便性を維持しながら価格を最適化するという合理的な判断をしています。
「ずらし駅は、単純に家賃が安いだけで選ぶユーザーだけではなく、設備や内装、住環境の質が厳しく比較されがちです」(知内の賃貸仲介店・エリアマネージャー)
こうしたエリアでは、水回りや断熱、ネット回線など、投資対効果が出やすい部分での差別化をすることで、同エリア内で一段上の家賃を狙える物件になるかもしれません。
ずらし駅は「安さ勝負」ではなく、「質で取りにいく」市場になりつつあります。
インフラ整備の効果は「時間差」で表れる
一方で、九州エリアの傾向からは、変わらぬ強さも見て取れます。九州圏の「借りて住みたい街」では、博多のような結節点駅は安定して上位を維持しています。
ターミナルは「伸びる」より「崩れにくい」市場で、利回りより安定性が重視されます。九州圏のベスト10はすべて福岡県内でした。
【九州圏】借りて住みたい街
1位 博多(福岡市)
2位 西鉄平尾(福岡市)
3位 高宮(福岡市)
近畿圏でも同様の構図が見られます。「買って住みたい街」では、都心回帰と郊外志向が同時に進む二極化が、ここでも確認できます。そしてインフラ効果のタイムラグ(時間差)も注目に値します。
【近畿圏】買って住みたい街
1位 谷町六丁目(大阪市)
2位 姫路(兵庫県)
3位 京橋(大阪市)
九州圏の「買って住みたい街」では、六本松は地下鉄七隈界隈の博多延伸後、すこし時間を置いて人気が顕在化してきました。
【九州圏】買って住みたい街
1位 六本松(福岡市)
2位 薬院(福岡市)
3位 高宮(福岡市)
鉄道の新路線開業や延伸、大規模再開発は、開業直後に一気に問い合わせが増えるわけではありません。生活動線が定着し、エリアの認知が広がり、供給物件が出揃うまでに、1年から数年の時間差があるようです。
つまり、数字が動き出してから参入するのでは遅いということです。
問い合わせが急増する前にこそ、物件取得やリフォームを仕込むタイミングになりそうです。
「延伸予定路線沿線、再開発計画が公表されている駅、今は静かだが将来交通利便性が高まるエリア。こうした場所は、顕在化前の『仕込み時』です。築古物件の取得と軽微なリノベーションを組み合わせれば、需要が表面化した段階で優位に立てるでしょう」(都内の不動産投資家)
購入市場は外側へ広がり、賃貸市場はずらしへ最適化し、インフラは遅れて効いてきます。
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ランキングは過去のデータですが、同時に未来の方向性を示す材料にもなります。
ただし、問い合わせ数は市場全体の需要そのものを示すものではありません。
実際に投資判断を行う際には、地域の供給戸数の増減、競合物件、入居者層などを冷静に確認する必要がありそうです。


