業界ニュース
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2026年3月 賃貸業界のニュースから
2026年の新潮流を読む ~都市も地方も変わる賃貸市場~
東京23区では、持ち家のハードルが一段と高くなっています。
住宅価格の上昇は止まらず、23区の新築マンション平均価格が1億円超という事態にもすっかり慣れてしまいました。
中古の分譲マンションも新築につられて上昇し、賃貸住宅の家賃もファミリー物件を中心に歴史的な大幅値上げが続いています。
止まらない価格高騰、「買うより借りる」層の流入
統計では前年に比べて1割の値上げというデータが出ていますが、現場レベルでは人気物件に関しては2割近い値上げも珍しくありません。
20年近く東京で賃貸仲介をやっていてもはじめての事態です。(東京都内の賃貸仲介店・店長)
23区内の世帯所得のうち家賃の負担が高まり、ついに4割を占めるようになってきたとの調査もあります。
分譲価格・家賃・所得のバランスが大きく変わり始めています。こうした価格状況を、事業者側も冷静に認識しています。
大手デベロッパーの社長は新聞各紙のインタビューでマンション価格の高騰について「土地取得費・建設費・人件費の上昇は依然として重く、価格調整の余地が小さい」という構造要因を指摘しています。特に郊外のマンション市場で工事費高騰の価格転嫁が難しく、供給数自体が減っていく可能性があるようです。
ここにもう一つの要因が加わります。それが中古分譲マンションの高値維持です。
中古価格が高止まりしていると、ファミリー世帯が「買うより借りる」を選びやすくなります。本来なら分譲へ向かうはずの層が賃貸に流れ込むため、都市部のファミリー賃貸の市場はタイトになっています。
オーナー側としては中古分譲の水準を目安にして賃料設定しやすくなり、自然に家賃相場を押し上げるでしょう。
つまり、都市圏のファミリー賃貸市場では
①持ち家断念層が流入して需要増
②建築費高騰でRCの新規供給が減る
③中古分譲価格は上昇し、家賃も上昇
という3つの力が重なっており、従来の「郊外なら安い」という常識は崩れるかもしれません。
昨年から、都心近郊の人気駅だけでなく、その外側の2番手、3番手の駅にもファミリー需要が波及し、思わぬ場所で家賃がじわじわ上がる現象が見られるようになってきました。
賃貸オーナーにとっては、空室で悩んでいたエリアが一転して競争力を持つ可能性もあり、家賃戦略を見直す余地が生まれてきています。(不動産業界関係者)
こうしたニーズを捉えて、積極的に設備やリフォームに投資するタイミングかもしれません。
地方にも追い風、産業投資と地価上昇の連鎖
こうした都市圏の需要タイト化とは別に、地方側でも静かに環境が変わりつつあります。
ここ数年は半導体工場やデータセンターなどの設備投資が地方に向かう動きが強まり、2021~25年度に国の補助金を伴って実行される設備投資は約17兆円規模とされ、そのうち約13兆円が地方向けとされています。
背景には半導体不足や地政学リスクを踏まえた「重要な産業部品は国内で生産拠点を確保する」という政策的な流れがあり、北海道・九州・北関東などで大型投資が相次いでいます。
工場や物流拠点は広い土地や電力、水の確保などが前提となるため、地価が相対的に低く整備余地のある地方に立地しやすいという事情もあります。
米国でもAI向けデータセンターは土地に余裕のあるテキサスなどに集まり、大企業の南部移転が進んでいます。
日本も同じ方向に向かうでしょう。(経済誌記者)
この投資の地方シフトと符合するように、2025年の公示地価では全国平均で+2.7%と上昇し、住宅地・商業地・工業地のすべてでプラスとなりました。
従来は「都市部が上がり、地方は下がる」という構図が一般的でしたが、近年は産業投資や自治体の政策を受けて、地方側でも底上げが見られるケースが増えています。
特に工業地の上昇幅が大きく、工場立地の広がりと連動する動きとなっています。
また、子育て施策や住環境整備によってファミリー層が流入し、住宅地が上昇する自治体も出てきました。
賃貸オーナーにとって重要なのは、「人口減だから地方は厳しい」という従来の見方が通用しなくなってきた点です。
設備投資や観光回復、子育て政策など、それぞれ「理由のある需要」が地域に生まれ、その受け皿として住宅や賃貸が必要とされています。
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都市圏は分譲価格の高騰でファミリー層が賃貸に押し戻され、地方は産業や政策によって賃貸が呼び込まれる――
理由は違いますが、そちらも賃貸市場を下支えする動きに期待しましょう。


