業界ニュース
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2025年11月 賃貸業界のニュースから
【来年度予算案】国の7兆円は賃貸経営にどう流れる?
オーナーが知るべき4つの未来図国土交通省が来年度に向けてまとめた概算要求は、一般会計で7兆812億円と今年度に比べて19%の大幅増となりました。今年1月に埼玉県八潮市で発生した道路陥没などを受け、全国のインフラ老朽化対策に1兆円規模を投じるためです。
さらに、土砂災害や地震、津波に備えた防災・減災対策にも1兆円余を盛り込みました。インフラ維持が最優先される一方、住宅分野でも賃貸経営に直結する政策の方向性が見えてきます。
空き家対策、高齢者や子育て世帯への支援、改修工事の補助、さらには不動産市場のDX化など。
来年度予算は、オーナーにとって「これからの賃貸経営の大きな流れ」を先取りする内容といえそうです。
① 空き家・相続問題が対策を迫る
日本の空き家はこの20年間で急増し、2003年の約212万戸から2023年には約385万戸へと1.8倍に膨らみました。
今後は相続をきっかけに、さらに大量の空き家が発生すると予測されています。国はこの流れに対応し、除却や再生に対する補助を強化、自治体や専門法人による管理・活用を後押しする方針です。
賃貸住宅も、将来的に空き家となるリスクを抱えています。
オーナーには、早い段階から出口戦略を描くことが欠かせなくなりそうです。物件を維持・再生して次世代に引き継ぐのか、それとも市場で売却して資金を回収するのか。
国の支援制度も意識しつつ、自分の物件を「空き家予備軍」として見据えておくことが求められる時代に入っています。
② 高齢者・子育て世帯への対応が不可欠に
単身高齢者の世帯は年々増加し、2030年には887万世帯に達すると見込まれ、孤独死リスクが社会問題化しています。国交省は居住支援法人による見守り等を制度化し、オーナーが高齢者に部屋を貸しやすい仕組みづくりへ予算要求を行いました。
賃貸経営の現場では「貸しにくい層」への対応がますます重要になります。高齢者をどう取り込むか。
「国交省概算要求を読むと、空室対策であると同時に、地域社会におけるオーナーの役割を拡大する試みに繋がる可能性も見えてきます」(経済紙・記者)
③ 改修投資を後押しする補助会
住宅の省エネ化やバリアフリー改修を対象とする支援制度も拡充されます。2025年4月には省エネ基準の義務化が開始。
さらに2030年には、新築全体の平均でZEHやZEB水準の性能を目指す政策目標が掲げられ、これに合わせて既存建物の改修を後押しする補助金が組まれました。
古い賃貸物件を抱えるオーナーには、修繕や改修に先手を打つかどうかが経営を左右します。
放置すれば家賃下落や入居率低下につながりますが、補助金活用で早めに設備を更新すれば、入居者の満足度向上と資産価値の維持につながるかもしれません。
特に給湯器や空調など更新サイクルの短い設備は、円安や資材高騰の影響で負担がかさみます。
国の支援を活かし、省エネ機器や断熱改修を進めれば、長期的なランニングコスト削減にもつながるでしょう。
来年度に向けて今から準備しておくべき話題になりそうです。
④ DXで物件情報の広がりに変化が
不動産市場の透明化を目指し、国は「不動産ID」の導入を進めています。住所や建物を一意に特定できるようになる仕組みで、令和9年度から試験運用が始まる予定です。加えて、不動産情報ライブラリの整備が進められており、物件ごとに価格、災害リスク、都市計画などの情報が統合的に表示できるようになりました。
不動産ID導入 不動産情報ライブラリ オーナーへの影響
・住所 ・価格 ・隠す経営→難しい
・建物特定 ▶ ・災害リスク ▶ ・見せる経営
・都市計画 など ↳チャンス
「不動産IDや情報ライブラリは、『情報を隠す時代』の終わりを意味します。これはオーナーにとって不利にはたらくと同時に、チャンスにもなります。耐震補強や省エネ設備をアピールすれば、むしろ差別化要因になる。
つまり隠すより見せる経営が問われるようになる」(経済紙・記者)たとえば、耐震補強や省エネ改修の実施状況を積極的に開示し、安心や快適さをアピールすることが重要になるでしょう。その他の設備投資もより積極的にプラスの評価に繋がるかもしれません。
DXは単なるデジタル化ではなく、オーナーの姿勢を大きく変える契機となりそうです。
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来年度予算の概算要求はたたき台ですが、今後具体的な制度設計が固まっていきます。オーナーや事業者にとっての実利がどの程度になるのかは、これからが本番です。引き続き注視しながら、この欄でも動きを追って紹介していきたいと思います。