業界ニュース
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2025年9月 賃貸業界のニュースから
100年に一度!自動運転の普及で米国不動産に変化
アメリカではテクノロジー企業の進出により、不動産市場が急速に変化しています。アメリカで起きている変化をサンフランシスコの状況を中心に紹介します。
Airbnb(エアビーアンドビー)やUber(ウーバー)など日本でもなじみ深い有名なテック企業が本社を置く、ハイテク都市のサンフランシスコでは自動運転タクシーが一般化し、観光客にも人気です。
他にも街中を電動キックボードなどが縦横無尽に走っており、こうした新しいモビリティによって自動車の所有率は毎年2%ずつ低下し、住宅ビジネスや都市政策にも大きな影響を与えています。
例えば、市内では駐車場の廃止や再利用の議論が活発化し、家賃の安い郊外に引っ越す人も増加傾向にあるようです。現在は市内の一部エリアだけのサービスですが、今後も自動運転がさらに普及すれば、「駅近」や「バス便」という従来の立地価値の概念にも変化が予想されます。
日本でも路上実験が進んでおり、今後の自動運転の普及で都市と郊外の距離感が変わる可能性があります。これまで通勤に不便だった地域が新たに注目される一方、車を所有しない世帯が増え、駐車場やガレージの設置要件が見直される可能性もあります。都市政策においても、移動データの活用や生活圏の再構築が求められそうです。
現地の専門家は、10年以内に自動運転が世界中に広がると予測されており、100年に1度の変化が間近に迫っている現実を感じます。
「契約」「投資」「内見」の領域でテクノロジーが進出
その他にも、住宅ビジネスの主要な接点である「契約」「投資」「内見」では、米国発のテクノロジーが次々に新しい仕組みを生み出しています。その一つが、契約や入居審査をAIで効率化するFindigs(ファインディグス)です。
下記の通り、管理会社・オーナー双方にメリットがあり、従来に比べ、時間も手間も大幅に削減できます。日本でも、こうしたAI契約の波が押し寄せるのは時間の問題でしょう。
STEP1 入居希望者が申請
STEP2 Findigsが申請情報をAIでスコアリング(審査)
STEP3 自動で審査結果を通知(合否)
STEP4 オンラインで契約書を作成・署名
STEP5 スムーズに入居へ
投資の領域では、Arrived Homes(アライヴド・ホームズ)が新たな潮流を生んでいます。住宅を小口化し、個人投資家が少額から不動産オーナーになれる仕組みを提供しています。アメリカでは数百ドルから不動産投資が始められるので、若い世代の投資家の参加が増えています。
下記の通り、投資から管理までがオンラインで完結する点も特徴です。日本でもNISAやクラファンによる「少額不動産投資」が拡大しており、今後は新しい不動産投資の形として参考になりそうです。
STEP1 Arrived Homesが物件を用意
STEP2 投資家が少額(例:100ドル~)で出資
STEP3 不動産が小口化され、複数人で所有
STEP4 家賃収益などを按分して受け取る
STEP5 投資家はオンラインで状況を管理
内見の現場でも、Matterport(マターポート)の3Dスキャン技術により、現地に行かずとも高精度なVR内見が可能になっています。「特に遠方からの契約や高額物件での決断を後押しする強力なツールになる」と現地のエージェントは語っています。
コロナ禍で注目されたオンライン内見は日本にも広がりつつありますが、まだ業界全体に浸透しているとは言い難い状況です。
下記の通り、スマホやPCで複数物件を比較検討できるため、今後さらに活用が広がりそうです。
STEP1 現地の物件を3Dスキャン(Matterport使用)
STEP2 バーチャルツアーをweb上で公開
STEP3 ユーザーがスマホやPCで内見体験
STEP4 複数物件を比較し、遠方からでも検討・決断
アメリカの事例から分かるのは、不動産ビジネスの主要な接点がテクノロジーによって再定義されつつあるということです。立地の基準が自動運転で変わり、契約はAIによって迅速になり、投資は小口化で門戸が広がり、内見は3D化で時間や場所の制約から解放されます。
これらの変化は、単なる効率化を超えて、住宅に関するトレンドや選択肢そのものにも影響を与えつつあります。日本では、高齢化や都市集中、空き家問題といった独自の課題がありますが、テクノロジーをうまく取り入れれば解決の糸口になるかもしれません。
今後、どの企業のサービスが日本市場で定着し、どのようなプレーヤーが新しい価値を創造するのでしょうか。できれば、日本発の企業やサービスがもっと現れるのを期待しつつ、動向を注視していきたいと思います。