業界ニュース
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2025年5月 賃貸業界のニュースから
地価上昇の背景から読み解く、これからの賃貸経営
2025年の公示地価が発表され、全国平均で全用途+2.7%の上昇となりました。
住宅地は+2.1%、商業地+3.9%、工業地+4.8%と、いずれも前年を上回る上昇率。特に東京圏では住宅地+4.2%、商業地は+8.2%と、都市部を中心に力強い回復が見られます。
全国平均
全用地:2.7% 住宅地:2.1% 商業地:3.9% 工業地 4.8%
東京圏
住宅地:4.2% 商業地:8.2%
一方で、今回の地価上昇は都市部に限らず、地方圏にも広がりを見せている点が特徴です。「自分の物件があるエリアではどうか?」と、オーナーの皆様にとっても今後の経営を考える重要なヒントになりそうです。
★Point1 ~子育て支援と住環境の充実が住宅需要を引き上げる~
最も顕著な例は、千葉県流山市。TX(つくばエクスプレス)沿線の利便性に加え、保育所の整備や子育て施策の充実が高く評価され、住宅地の上昇率は+13.6%と県内トップを記録しました。
兵庫県明石市でも、給食費の無償化や医療費助成制度などの積極的な支援策が奏功。8年連続で地価が上昇し、2025年は+4.1%となっています。岐阜県岐南町も同様に、教育や住環境の整備により若い世代の転入が増加。住宅地の価格は+1.2%を記録しています。
これらの地域では、新築需要だけでなく、既存の賃貸住宅にも追い風が吹いています。若年層の流入は長期的な居住にもつながりやすく、空室対策や設備投資の優先順位にも影響を与えるでしょう。
★Point2 ~半導体工場の立地が地域経済と賃貸市場を動かす~
北海道千歳市では、大手半導体メーカー「ラピダス」の工場建設が進んでおり、関連企業の進出や建設ラッシュによって商業地が+37.8%と全国最高の上昇率を記録しました。
九州でも同様の傾向が見られます。福岡県久留米市では、住宅地+5.5%、工業地+5.2%と需要の高まりが数字に表れています。工場労働者や技術者の居住ニーズ、さらにはそれを支えるサービス業の活性化が、地域全体の不動産市場に波及しています。
このような地域では、従業員向けの中長期賃貸住宅や社宅ニーズも増え、物件の種類や間取りによっては家賃見直しのタイミングになる可能性もあるでしょう。
★Point3 ~インバウンド回復が観光地の価値を再浮上させる~
コロナ禍で停滞していた観光業も、インバウンドの復活により再び注目を集めています。北海道富良野市の北の峰地区では、住宅地が+31.3%と全国トップの上昇率に。外国人観光客の増加が別荘やホテル用地の需要を押し上げた結果です。
長野県白馬村では、国内外からのスキー客による別荘・コンドミニアム需要が堅調で、住宅地+19.8%、商業地+33.0%の上昇。兵庫県豊岡市(城崎温泉)や大分県別府市などでも、観光客の回復とともに宿泊施設や飲食店用地の需要が高まり、商業地が2桁の上昇を見せました。
観光地の地価上昇は、短期滞在者向けの賃貸需要や宿泊施設の運用にも影響を与える要因となっています。
地価上昇をどう読むか?これからの賃貸経営への示唆
このように地価が上昇している背景には、“人の動き”があります。住みやすさを求める若年層、産業誘致に伴う労働人口、観光回復による短期滞在者──それぞれの動きが、賃貸ニーズに直結しています。
大切なのは、単に「上がっている・下がっている」を知るだけではなく、その背景を理解し、「自分の物件にとってはどんな影響があるのか?」を読み解く視点です。
自身の物件エリアを見直すことから始めよう
そして今こそ、自身の物件がある地域の経済状況・人口動向・産業立地などを確認し、賃貸需要の見通しを立てることが大切です。
一方で注意したいのは、建築コストの上昇や資材価格の高騰によって、仮に新築や再投資を考えても、以前よりも大きな資金が必要になること。投資利回りが思ったほど出ない可能性もあるため、慎重なシミュレーションが求められます。
今すぐに売却や購入を決める必要はありませんが、まずは地価の動きから「自分の物件はどうか?」を考えるところから、賃貸経営の次の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。