賃貸経営塾
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No.8「消費税増税と貸主」
繁忙期が終わると、いよいよ消費税8%の時代に突入しますが、オーナー様の賃貸経営にどんな影響があるのでしょうか?
そもそも、居住用賃貸物件の貸主と消費税の関係は理不尽です。
一般の商売で考えてみましょう。10万円の商品の原価が5万円のとき、消費税を4千円負担するので仕入価格は5万4千円になります。
それを10万で売るときは消費税を8千円預かるので売上は10万8千円になります。
そして4千円を国に納めるので手元には利益の5万円が残ります。
(108,000 円-54,000 円-4,000 円=50,000 円)
このように一般の商売では、仕入れ時に消費税を負担、売るときに徴収、最後に国に納めれば手元には5万円の利益だけが残ります。
消費税は目の前を素通りて、事業者の手元には残りません。
では、消費税は誰が負担しているのか、というと、最後に購入した「最終消費者」ということになります。
一方、居住用賃貸物件の家賃は非課税なので貸主は消費税は預かりません。しかし貸主は修繕費用等の支払い時に消費税を負担しています。家賃の原価には消費税が乗っているのに、その分は回収できない立場なのです。
つまり、居住用物件の賃貸契約における最終消費者は「借主ではなく貸主」と考えればいいのでしょうか。
このあたりが「ちょっと理不尽だな」と感じるところです。
それが10%に増えたら、さらに大変です。その分を家賃に転嫁したいと考えても、市場(借主)に許してもらえません。
さて一方で、事業用賃貸物件(店舗・事務所・駐車場等)の貸主の対応は分かれます。
事業用の家賃収入が年間1千万円を超える課税貸主なら、当然に消費税分を5%から8%に変更するでしょう。
そうでない非課税貸主の場合は「どうするか」それぞれの判断が必要になります。
いずれにしても消費税を徴収する場合は、1年半後には10%になる可能性もありますから、今後の契約書等には「賃料10万円(別途消費税)」等と、税率変更に対応できるようにしておきましょう。
さて、消費税増税に対して、貸主はどのように対応すればいいのでしょうか。小さな商店主や企業は、コストアップに対して、内部の合理化を進めようとしています。そして自分の商品にさらに磨きをかけて、競争力を高めようとします。背中を丸めて縮こまっているだけでは負けてしまうのです。居住用賃貸物件の貸主も、さらに「運営費の合理化」を進める必要があります。
それは「お金をかけない」ということでなく「生きた金をかける」ということです。
そして物件に競争力をつけて、ライバル物件より1000円でも2000円でも、借主が高く借りてくれるような魅力を持たせることが、ますます重要な時代になってくるのだと思います。