賃貸経営塾
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2026年7月 収益最大化のための!賃貸経営塾
長期保有物件の「デッドクロス」に備える
資産管理法人への売却で考える減価償却と財務戦略
賃貸経営を長年続けると、ある時期を境にキャッシュフローが急激に悪化することがあります。
これは建物の減価償却費(経費)が年々減少し、ローンの元金返済額(経費にならない支出)を下回ることで、
収入が変わらないのに税金だけが跳ね上がる「デッドクロス」という現象です。
確実な資産防衛を考えるオーナー様にとって避けて通れない課題ですが、
有効な選択肢の一つが、個人保有の築古物件を自身で設立した資産管理法人へ適正価格で売却し、
法人側で新たな取得価額を基に減価償却を行う手法です。
今回は、この「法人への建物売却スキーム」の実務と注意点を解説します。
① 個人から法人への売買における減価償却の仕組み
木造やRC造の物件は、年数の経過により帳簿上の建物価値が下がり、
利益を相殺していた減価償却費が減少します。
結果としてオーナー個人の所得税・住民税の負担が大きく膨らんでしまいます。
この状況において個人から資産管理法人へ物件を移転(売買)させることで、
法人が取得した建物部分の取得価額をベースに、
法人資産として改めて減価償却費を計上することが可能になります。
現在の市場価格を踏まえた適正な時価で売却することにより、
法人側の課税所得を平準化し、長期的なキャッシュフロー改善に繋がります。
資産管理法人へ移すと、減価償却を再設計できる
個人保有の築古物件 資産管理法人が取得
減価償却費が小さい 新たな取得価額をもとに減価償却
税負担が重い ⇒ 適正価格で売却 ⇒ 課税所得を平準化
手残りが悪化 長期的な手残り改善
② 税務上の否認リスクを避けるための適正時価と按分の設定
ただし、身内間の取引だからと恣意的に売買価格を決めてはなりません。
税負担を不当に減少させる取引とみなされれば、同族会社等の行為計算否認や、
時価との差額に対する課税などにより、追徴課税を受ける可能性があります。
リスクを抑える鍵は「客観的な適正時価と按分の証明」です。
実務上は不動産会社による正式な査定書を複数社から取得し、
資産規模が大きい物件では不動産鑑定士による鑑定評価書で妥当性を担保します。
また、売買総額だけでなく「土地・建物価格の按分」にも合理性が必要です。
減価償却できるのは建物のみであるため、建物を不自然に高く設定することは避けねばなりません。
法人が実際に購入資金を用意するなど、財布を明確に分ける管理・資金決済の実体も不可欠です。
身内間売買の望ましい対応
● 査定書・鑑定評価書で根拠を残す
● 合理的な按分根拠を用意する
● 法人が購入資金を用意し決済記録を残す
● 口座・帳簿・契約を分けて管理する
③ 移転コストと所得税の「損益分岐点」を試算する
本スキームには「売買に伴う一時コスト」が発生します。
法人側には登録免許税や不動産取得税が課され、個人側には売却益に対する譲渡所得税(長期譲渡の場合は復興特別所得税を合わせ約20.315%)が発生します。
実行の判断基準は、下記の数式が成り立つか否かです。
移転コスト総額 < 毎年の税負担軽減額 × 再償却期間
個人の所得税率が高いオーナー様の場合、一時的なコストを支払ってでも
税負担の平準化につながる法人側で再償却をスタートさせた方が、トータルの手残りがプラスになるケースもあります。
なお、建物のみを法人に売却して土地の移転コストを節約する場合は、個人・法人間での土地利用関係や
地代設定、無償返還届出の要否などを慎重に整理する必要があります。
実行判断は「一時コスト」と「将来効果」の比較で考える
移転時にかかる一時コスト
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 譲渡所得税
- 司法書士・税理士費用など
法人移転後に期待できる効果
- 減価償却費の再計上
- 税負担の平準化
- 毎年の手残り改善
- 長期的なCF改善
※将来効果が一時コストを上回るかが判断基準※
信頼できる専門家とともに慎重な設計を
デッドクロスへの対応は、個人の所得税、法人税、将来の相続税までを見据えた高度な戦略です。
実際の税務処理やシミュレーションはケースにより異なるため、実行にあたっては必ず事前に税理士等の専門家へ確認を行ってください。
まずはご自身の物件の減価償却の残り期間をチェックし、信頼できるパートナーとともに具体的な試算から始めてみましょう。


